SKCキッズカレッジのブログ

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SKCの漢字教育

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書字エラー

粘土と漢字指導について 20200403

 

 あるところで、キッズの粘土指導が漢字習得にどう効果があるのかが議論になったらしい。よくある議論で、とくに珍しいことではありませんが。しかし、粘土が漢字の書きにどう効果があるのかという問いをする人は、まず自分が漢字の指導とは何かをどう考えているのかを明らかにしなければなりません。

 特別支援教育でよく観察される書字の指導というものは、文字の指導ではなく、字形の書き方すなわち手指の筋肉運動スキルの反復訓練に過ぎません。基本的な問題として、ほとんどの研究や特別支援教育の実践は、「字体」と「字形」の区別をしていません。そこから多くの場合、「字体」にかかわる文字の意味の指導は取り残されたままになります。そもそも、文字の教育になっていないということです。

 

キッズカレッジの粘土指導は、「漢字」の指導にも関係しているけれども、直接的に「漢字の書き方」の指導を目指してはいない。結果的にはそれでかなり改善しますが。キッズカレッジの指導は、基本的パターンは月2回、1回1時間で漢字1単語(単漢字の場合は1字、2語熟語で2漢字)、休みなしとして年間24回、つまり年24字(単語)だけをあつかう。漢字指導であるとするならばこんな悠長な指導はありません。

漢字指導の最大の問題点は、「字体は抽象的なものであり、視覚化することはできない」という漢字の「字体」の本質をどの程度考えているかということです。日本の漢字教育のほとんどが、「字体」の本質を無視しています。

 キッズの指導の特徴はたくさんありますが、議論を拡散させないためにこの点に限って最低2つの点を指摘しておく必要があります。

第1に、粘土を使うときの指導の重点は、「言葉の意味」(断じて「書き」ではない)を視覚的に構成することにあります。上手下手は全く関係ありません。どんなに上手でも模倣はだめ、自分のイメージを大切にする。「ピクチャー・シンキング」の一つといってもよいかもしれない。1時間の学習時間でこの意味の形象化にほぼすべての時間を費やす子どももいるが、スタッフは黙ってみています。言葉は読み書き障害の子どもの思考を混乱させることがあるからです。スタッフは言葉の意味を言葉で説明しないことが原則です。もちろん、「こんなんもある」などとやって見せたりすることは御法度です。「字体」指導なので、基本的には、読めればよいという「漢字の本質」に則ります。文字の形、線の長さ、傾き、などは他の字と混同しなければ間違いのです。「×」ではありません。

第2に、キッズカレッジの指導は粘土を使うか否かにかかわらず、指導の際にスタッフは書き方だけでなく、意味も「教えない」「指摘しない」「直さない」、ヒントによる「誘導もしてはならない」ことを無条件に守らなければなりません。それ故、子どもが粘土や漢字に取り組んでいる間はスタッフはほぼ黙ったままでいます。

これら徹底して「教えない指導」は、キッズカレッジ設立時からの一貫した原則です。つまり、粘土指導は、文字の書き方の指導法ではありません。キッズカレッジの指導は、子どもの指先にではなく、子どもの思考に焦点を置いています。しかも、自分が漢字をどう書いているか、どこで間違いやすいか、どうすれば書きやすいかなどの自分を知ることに重点があります。ところが、この方法によって、長期的には子どもの書字の間違い方は大きく変化していきます。指先の書くスキルが変わったのではなく、書く主体の思考に発達的な変化が(自動的に、弁証法的自己運動として)起きます。指導と子どもの漢字学習との間に、主体を置き去りにした直線的なリジットな相関関係などはじめから想定していません。キッズカレッジの漢字指導は、発達障害のある子どもの人間的発達に関わる教育の入り口としての方法ともいえます。(番頭)

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