SKCキッズカレッジのブログ

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「子どもの事実」vs「教師の捉えた事実」

 

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ある教師の研究会では、これまで「学習の事実」に基づく「授業の中での子ども理解」やもっと広く「子どもの事実」を出し合い、議論を重ねてきた。低学年で習得することになっているひらがなやかけ算の習得は、中学年や高学年ではどうなっているのだろうか、という話や疑問が出されたときには、すぐに簡単なテストをやってみて、教師の主観ではなく「事実」に基づく議論をしてきた。そうすると、高学年のどのクラスにもひらがなやかけ算でつまずいている生徒が一定数いることがわかってきた。研究会では、こうした事実が単に子どもの能力や学習状況によるだけでなく、指導要領によって縛られている教科書や指導法にも原因があるのではないかという観点で、教科書がどうなっているかということについても批判的に検討してきた。そうすると、最近の教科書が算数だけでなく、国語でも「考え方」や「やり方」を同じ手順で繰り返し覚えさせるようなものになっていることが明らかになってきた。さらに、学習内容の量が半端でなく多いので、子どもの理解を待っているような余裕は教師の方に残されていない。

 ところが、最近、こうした研究会の「学習の事実」や「子どもの事実」に基づく実践研究の方法に対して、そうではなく「教師が捉えた事実」という方がよいのではないかという批判的コメントが出てきた。研究会のメンバーは、まだそうした教師中心の子どもの理解が大手を振るっていることに、驚きと「やっぱり」という感想とが入り交じった複雑な思いを抱くことになった。今日の複雑な教育状況の中で教師が、授業や授業外で見せる子どものありのままの姿をしっかりとらえているか、という教育実践研究の現状に対する疑問や批判から「子どもの事実」に基づく「子ども理解」という議論の方法を実践して手応えを感じ始めていたなかでのできごとであった。これまで、高学年でもひらがなが十分に習得されていなかったために学習に意欲がだせずにいるのに学習意欲がない子とか、学習した時には出きるのに頑張りが足りない子だとか、勉強はできないけれど他に良いところがあるなどという「教師が捉えた事実」が、どれほどに一人ひとりの子どもが抱え込んでいる学習の困難や内面の葛藤などの事実とかけ離れているかということへの問題意識はまだそれほど広がっていないのだなという思いを強くすることになった。実は、「学習の事実」や「子どもの事実」は、そのように見ようという問題意識のある教師にとってそれほどむずかしいことではない。日々の授業での子どもの様子、学習の取り組み方やでき具合を、教師の主観を交えず、ありのままにみればよいだけのことである。ただ、教科書や指導法まで拘束する学習規律、ユニバーサルデザインなどが上から押しつけられる現場では、教師がありのままに子どもを見ることすら困難にしている現状がある。だからこそ、「学習の事実」に基づく「子どもの事実」を大切にし、そこから出発する実践研究の必要性を強く主張する必要がある。

 

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